取り残されるか、進化するか? 就職氷河期世代エンジニアの未来予測

2025年3月27日

取り残されるか、進化するか? 就職氷河期世代エンジニアの未来予測

就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の雇用環境が厳しい時期(1990年代後半から2000年代初頭)に就職活動を行った世代を指します (就職氷河期世代とIT業界/若手世代が注意するべき轍|久松剛)。新卒の有効求人倍率は1999年に過去最低の0.48倍を記録し (就職氷河期世代とIT業界/若手世代が注意するべき轍|久松剛)、希望する正社員ポジションに就けないまま不本意な非正規雇用や無業状態に追い込まれた人も少なくありません ()。彼らは現在40代後半~60歳前後となり、ITエンジニアとしてキャリアの岐路に立たされています。「このまま技術についていけず取り残されるのか? それとも新たなスキルを身につけて進化するのか?」――本記事では、この世代のエンジニアが直面する現実と未来への展望を探ります。

(就職氷河期世代とIT業界/若手世代が注意するべき轍|久松剛)※1990年代後半~2000年前後の「就職氷河期」には有効求人倍率(黒線)が著しく低下し、新卒者の就職が極めて困難だった (就職氷河期世代とIT業界/若手世代が注意するべき轍|久松剛)

就職氷河期世代には現在も様々な課題に直面している人が多く、政府は「個人や家族だけの問題ではなく社会全体で受け止めるべき重要課題」と位置付けています ()。実際、この世代にはいまだ安定した職に就けず社会との接点を失った「引きこもり状態」の人が推計61万人に上るとも言われています (50代からのキャリア再生!就職氷河期世代でもできるITスキル習得法|藤堂麗)。一方で少子化による人手不足が叫ばれる中、企業からほとんど見向きもされていないのがこの就職氷河期世代でもあります (就職氷河期世代とIT業界/若手世代が注意するべき轍|久松剛)。こうした矛盾する状況下、本記事では 1) 氷河期世代エンジニアのリアルな成功・失敗事例、2) 社会的・心理的な課題、3) 専門家の視点による分析、4) 未来へのキャリア戦略と支援策 を順に取り上げます。定量的データと当事者の声を交え、同世代の読者が「自分ごと」として共感できる内容を目指します。

1. 氷河期エンジニアのリアル:成功体験と挫折のストーリー

まず、この世代のエンジニアが歩んできたキャリアの実例を見てみましょう。就職氷河期に新卒時代を迎えた彼らの多くは、就職難からキャリアのスタートで出遅れました。その後も技術者として生き残るために試行錯誤を重ね、それでも道半ばで苦しんでいる人もいます。一方で逆境から這い上がり、新たな活路を見出した人も存在します。

以上の事例から分かるように、就職氷河期世代のエンジニアには長い苦労の末にようやく正社員となった人もいれば、挑戦を諦めずスキル習得で道を切り拓いた人もいます。一方で、不本意な非正規のまま中高年となり「自分は取り残されてしまった」と感じている人も少なくありません。それぞれの歩みは異なりますが、共通するのは**「もう遅い」と決めつけず行動を起こすことが未来を開く鍵になる**という点です。実際、政府や業界団体による支援策を活用してキャリア再生に成功するケースも出ています。例えば一般社団法人ソフトウェア協会の報告では、厚労省委託事業として3年間で就職氷河期世代494名にIT研修を実施し、そのうち356名がIT資格を取得、195名がIT業界で就職する成果を上げたとされています (就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業報告 | SAJ 一般社団法人ソフトウェア協会)。このような支援プログラムによって、「氷河期世代でもITエンジニアとして安定就労できた」という実例が着実に積み重なっています。

2. 世代特有の社会・心理的課題:孤立感、自己肯定感の低下、世代間ギャップ

就職氷河期世代のエンジニアが直面する課題は、単に職探しの苦労だけではありません。長年にわたる不遇やキャリア停滞は、本人のメンタルや社会との繋がりにも影響を及ぼしています。

●孤立と将来への不安: 非正規雇用や長期失業を経験した氷河期世代は、職場での人間関係や社会との接点が希薄になりがちです。その結果、「この先ずっと孤独な人生になってしまうのでは」という不安を抱える人もいます。実際、関西在住の50代男性は「会社を辞めてしまったら付き合いが途絶え、大学時代の友人もほとんど遠方で…この先、最後は孤独死するのかなあという心配はあります」と孤立への恐怖心を語っています (資料シリーズNo.272『就職氷河期世代のキャリアと意識 ―困難を抱える20人のインタビュー調査から―』|労働政策研究・研修機構(JILPT))。家庭を持たず一人暮らしの場合はもちろん、家族がいても同年代の友人知人が少なく社会的孤立感を深めているケースもあります。また、「社内に同期や同世代がほとんどおらず職場で孤立しがち」という声や、「周りは若い人ばかりで会話についていけない」といった世代間ギャップに戸惑う声も聞かれます。このような孤立感は自己肯定感の低下にも直結しかねません。

●自己肯定感の低下とキャリアの諦念: 就職氷河期世代の中には、「自分は社会に必要とされていないのではないか」と劣等感を抱く人も少なくありません。新卒時の大量の不採用通知、非正規で働いても正社員登用されない経験、技術のキャッチアップに苦戦して若手に追い抜かれる屈辱…。そうした積み重ねで自信を喪失し、「どうせ何をやっても無駄だ」という諦めの気持ちが芽生えてしまうのです。ある調査では、氷河期世代で仕事探しに苦労している人の83.0%が「自分の年齢が不利に感じた」と回答し、次いで51.9%が「希望職種の経験がない」ことを挙げています (認定NPO法人育て上げネットと就職氷河期世代支援で連携 ー仕事探しで困難に感じたことや希望する支援などに関する調査実施ー | 株式会社リクルートのプレスリリース)。さらに約3割の人が「面接でうまく話せない・何を話していいか分からない」と自己PRの難しさを感じており (認定NPO法人育て上げネットと就職氷河期世代支援で連携 ー仕事探しで困難に感じたことや希望する支援などに関する調査実施ー | 株式会社リクルートのプレスリリース)、面接への苦手意識も自己肯定感低下の一因です。専門家からは「小さな成功体験を積み重ねて自信を取り戻す支援」が有効だと指摘されていますが (資料シリーズNo.272『就職氷河期世代のキャリアと意識 ―困難を抱える20人のインタビュー調査から―』|労働政策研究・研修機構(JILPT))、この世代へのメンタルケアを含む支援のあり方はまだ試行錯誤の段階とされています (資料シリーズNo.272『就職氷河期世代のキャリアと意識 ―困難を抱える20人のインタビュー調査から―』|労働政策研究・研修機構(JILPT))。

●世代間ギャップと職場の疎外感: 40~50代のエンジニアが組織で感じるジェネレーションギャップも無視できません。日本企業では現在、上の団塊世代・バブル世代、中堅の氷河期世代、そして20~30代のゆとり・Z世代が混在しています。当然、仕事観やスキル習得のスタイル、コミュニケーションの取り方に世代差があり、相互理解が不十分だと摩擦が生じます。例えば氷河期世代は「上から与えられた仕事に粘り強く取り組む」傾向がある一方、最近の若手は多様な働き方やワークライフバランスを重視しがちです。「自分たちは苦労してきたのに、最近の若手は恵まれているのに覇気がない」と不満を抱く中高年と、「時代が違うのに根性論を押し付けないでほしい」と感じる若手との間で溝が生まれることもあります。また、氷河期世代の中には上司が自分より一回り以上若いという状況も増えており、「年下上司にどう接していいか戸惑う」「プライドが邪魔してうまく甘えられない」といった声もあります。この世代は組織内に同年代が少ないため孤軍奮闘しがちで、「会社の中で居場所がない」と感じてしまうケースもあるのです (バブル、氷河期、Z世代 社内の歪な人口構造で起こる世代間対立 – note)。もっとも最近ではダイバーシティ推進もあり、「年齢や役職に関係なく意見交換できる場を好む」傾向が若手にも広がっています (職場のジェネレーションギャップはどう埋める?世代間の認識の …)。お互い歩み寄り世代間の強みを活かし合う環境づくりができれば、氷河期世代も組織の中で再び輝ける可能性があります。

このように、就職氷河期世代エンジニアの抱える課題は単なるスキル不足や求人の少なさだけではなく、長年の不遇による心理的ダメージ社会的孤立にも及んでいます。それだけに、再起を図るには単発の就職支援だけでなく、メンタル面のケアやコミュニティづくりも含めた包括的なサポートが求められます。「一人で悩まないで」「あなたは決して独りではない」と感じられる場や仲間の存在が、この世代の自己肯定感を回復し新たな一歩を踏み出す原動力になるでしょう。

3. 専門家はどう見るか:氷河期世代エンジニア支援への提言

就職氷河期世代の問題に20年以上取り組んできた専門家や、雇用・人材業界の識者たちは、現状をどう分析し、どんな解決策を提案しているのでしょうか。ここではいくつかの視点をご紹介します。

●「すでにやれることはやり尽くした?」厳しい声も: 雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏は、政府の氷河期世代支援策に疑問を呈しています。海老原氏によれば「雇用やキャリアの専門家は、氷河期世代でも正社員になれる人はすでになっており、これ以上やれることは…と口を揃える。 (「Fラン大卒も正社員になれる人はすでになっている」専門家は口を揃えるのに"氷河期対策"に金が流れる謎 実情を知る専門家ほど「もうこれ以上やれることは…」 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン))」とのこと。つまり、支援の成果で救える人は概ね救われており、現在まで正社員になれていない人たちは何らかの深刻な事情を抱えている可能性が高いという指摘です。実際、就職氷河期対策にはこれまでも公的資金が投入されてきましたが、「必要以上に深刻に報じるマスコミや政府は、雇用の統計と現場のリアルを読み切れていないのではないか」とも述べられています (「Fラン大卒も正社員になれる人はすでになっている」専門家は口を揃えるのに"氷河期対策"に金が流れる謎 実情を知る専門家ほど「もうこれ以上やれることは…」 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン))。この見解は厳しいものですが、支援策だけに頼るのでなく本人の主体的な努力も不可欠であることを示唆しています。

●「本人も企業も気づいていない強みがある」: 一方で、氷河期世代の潜在力に着目する専門家もいます。20年にわたり氷河期世代の就労支援に携わってきた藤井哲也氏(キャリアコンサルタント)は、「本人や企業が気づいていない強みや経験を就職氷河期世代の本人が持っています。そうした事例を私は多く見てきました」と述べています (就職氷河期世代の活躍支援に20年間携わってきたコンサルタントが読む「2022年度の就職氷河期世代支援」|藤井哲也 @パブリックXとソーシャルXの経営者)。例えば、派手な経歴はなくても地道にコツコツ努力してきた忍耐力、バブル期入社の上の世代とデジタルネイティブな下の世代の両方を理解できる架け橋としての役割、家庭や社会で積んだ人生経験など、氷河期世代ならではの強みがあるというのです。藤井氏は各地の「就職氷河期世代支援プラットフォーム」でピアカウンセリング(同世代同士の対話)などを通じ、この世代自身に自分の強みに気づいてもらう取り組みを進めており、「全国にこうした取り組みが広がってほしい」と強調しています (就職氷河期世代の活躍支援に20年間携わってきたコンサルタントが読む「2022年度の就職氷河期世代支援」|藤井哲也 @パブリックXとソーシャルXの経営者)。専門家からは「自分はダメだ」と萎縮しがちな当事者の意識改革と、企業側の固定観念打破の両面が必要だとの声が上がっています。

●人材市場の変化:「40~50代エンジニア需要は高まっている」: 明るい兆しとして、人材紹介市場では近年中高年ITエンジニアの需要増加が見られます。実際、2025年に入り大手人材紹介会社が40代・50代のエンジニア人材を積極的に企業へ売り込む動きが加速しているといいます (人材紹介会社が狙う40代・50代ITエンジニアの転職―中途採用市場の変化はポジティブなのか?|久松剛)。ベンチャー企業やスタートアップにも「経験豊富なシニアエンジニア」を紹介するケースが増えており、「40代、50代のキャリア支援が活発化しているのは良いことだ」と歓迎する声もあります (人材紹介会社が狙う40代・50代ITエンジニアの転職―中途採用市場の変化はポジティブなのか?|久松剛)。背景には、近年のIT業界で即戦力となる経験者を適正な給与で採用したいというニーズの高まりがあります。「エンジニア採用バブル期に大量採用した若手が期待ほど育たなかった」「生成AIの活用で未経験新人に任せる単純タスクが減った」などの理由から、各社とも人員計画を見直し**「ミドル・シニアでも適切なスキルを持った人材」を求める傾向**が強まっているのです (人材紹介会社が狙う40代・50代ITエンジニアの転職―中途採用市場の変化はポジティブなのか?|久松剛)。実際、日経新聞の報道によれば40代以上でスタートアップ企業へ転職する人が2年で8割増加したともいいます (人材紹介会社が狙う40代・50代ITエンジニアの転職―中途採用市場の変化はポジティブなのか?|久松剛)。もっとも、人材紹介各社がこぞって中高年に参入する状況に対し、「新規参入組には期待と共に危うさも感じる。しっかり取り組んでほしい」という指摘もあります (人材紹介会社が狙う40代・50代ITエンジニアの転職―中途採用市場の変化はポジティブなのか?|久松剛)。いずれにせよ、市場がシニア人材の価値を再評価し始めたことは、この世代にとって追い風と言えるでしょう。「自分なんてもう雇ってもらえない」と決めつけず、需要の芽が出ている分野に目を向けることが大切です。

●専門家からの提言: 氷河期世代支援に携わる専門家からは、今後の施策に関する具体的な提言もなされています。藤井氏は現場感覚から、現在の課題として (1)企業側の採用意欲醸成、(2)当事者への支援策周知、(3)職業訓練・能力開発プログラムのアップデート を挙げています (就職氷河期世代の活躍支援に20年間携わってきたコンサルタントが読む「2022年度の就職氷河期世代支援」|藤井哲也 @パブリックXとソーシャルXの経営者)。企業が「この世代を採用してみよう」という機運を高めること、支援策が必要な人にきちんと情報が届くようにすること、そしてIT分野など時代に合わせた実践的なスキル訓練の場を充実させることが重要だといいます (就職氷河期世代の活躍支援に20年間携わってきたコンサルタントが読む「2022年度の就職氷河期世代支援」|藤井哲也 @パブリックXとソーシャルXの経営者)。また、NPO法人育て上げネットとリクルートが実施した調査では、氷河期世代当事者が「希望する支援」として「キャリアカウンセリング」(52.8%)や「就業体験の機会提供」(50.2%)を挙げており (認定NPO法人育て上げネットと就職氷河期世代支援で連携 ー仕事探しで困難に感じたことや希望する支援などに関する調査実施ー | 株式会社リクルートのプレスリリース)、マンツーマンの相談やトライアル雇用の場を望む声が強いことが分かりました。専門家たちは、単に求人情報を提示するだけでなく「伴走型」の支援が不可欠だと口を揃えています。それはカウンセラーや支援員が寄り添い、応募書類の書き方から面接対策、入社後の定着支援まで一貫してフォローするアプローチです (認定NPO法人育て上げネットと就職氷河期世代支援で連携 ー仕事探しで困難に感じたことや希望する支援などに関する調査実施ー | 株式会社リクルートのプレスリリース)。実際、厚労省の「地域若者サポートステーション」では氷河期世代向けに専任スタッフを配置し、きめ細かな伴走支援で成果を上げた例もあります ([PDF] サポステに就職氷河期世代の長期無業者等への支援を行う専任職員を)。専門家の提言をまとめると、「企業・行政・支援団体・本人」がそれぞれ意識を変え協力し合うことこそが、氷河期世代エンジニアの活躍の場を広げるカギだと言えそうです。

4. 氷河期世代エンジニアの未来予測:これからの10年をどう戦うか

では、就職氷河期世代のエンジニアたちは、これからどのようにキャリアを設計し直し、未来に備えていけばよいのでしょうか。以下に、考えられる戦略や支援策をまとめます。

(Senior Network Engineer Photos, Download The BEST Free Senior Network Engineer Stock Photos & HD Images)※パソコンに向かいタイピングするシニア世代。ITスキルの習得やリスキリングによって新たなキャリアの道が開ける。

●ITスキルの学び直しで市場価値を再構築する: 現代の仕事環境ではデジタルスキルがかつてないほど重要になっています。幸いなことに、プログラミングやデータ分析などのITスキルは独学や短期講座で習得可能であり、年齢に関係なく新しい知識を身につけられます (50代からのキャリア再生!就職氷河期世代でもできるITスキル習得法|藤堂麗)。例えば、厚生労働省が各地で実施している職業訓練では、35歳以上55歳未満の就職氷河期世代向けに「IT検証技術者コース」や「システム運用技術者コース」といった未経験者OKの無料講座が用意されています (●就職氷河期世代のあなたへ|キャリコン相談室 AICHI(キャリアコンサルティング ジョブ・カード 愛知))。実務で使えるスキルを基礎から学び、関連資格(ITパスポート、基本情報技術者、IT検証技術者など)の取得を目指すことで、転職時のアピール材料にもなります (50代からのキャリア再生!就職氷河期世代でもできるITスキル習得法|藤堂麗)。実際、前述のように短期集中のIT研修で資格を取得し正社員就職につながった事例も報告されています (就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業報告 | SAJ 一般社団法人ソフトウェア協会)。ポイントは「今さら自分にできるだろうか」と怯むより、需要の高い分野に絞って集中的に学ぶことです。最新テクノロジーほど若手も経験が浅い場合が多く、思い切って飛び込めば年齢に関係なく第一人者になれるチャンスがあります。10年後を見据え、ITに限らず興味と需要の交差点にあるスキルを見極めて習得しておくことが、未来への自己投資になるでしょう。

●「副業・フリーランス」で新しい働き方に踏み出す: 年齢を重ねるほど、従来型の正社員採用にこだわると選択肢が狭まりがちです。しかし近年は在宅ワークやフリーランスといった柔軟な働き方が広がり、IT分野ではリモート案件も増えています (50代からのキャリア再生!就職氷河期世代でもできるITスキル習得法|藤堂麗)。スキルと実績さえあれば年齢に関係なく仕事を獲得できる世界がオンライン上に存在します。例えばクラウドソーシング(CrowdWorksやLancersなど)を活用し、プログラミングやWeb制作の案件に副業として挑戦してみるのも一つの方法です (50代からのキャリア再生!就職氷河期世代でもできるITスキル習得法|藤堂麗)。いきなり独立するのが不安なら、現在の仕事を続けながら週末や夜に副業プロジェクトをこなして実績を積むこともできます (50代からのキャリア再生!就職氷河期世代でもできるITスキル習得法|藤堂麗)。そうして信頼とポートフォリオを構築できれば、将来的にフリーランス転向や起業といった道も開けます。副業解禁の企業も増えている今、社外での活動は収入源を増やすだけでなく**「自分はまだやれる」という自信回復**にも繋がります。10年先を考えると、定年延長で会社にしがみつくだけでなく、自分の力で稼ぐ術を持っておくことは大きな強みになるでしょう。

●企業・自治体の氷河期世代採用枠を活用する: 国や自治体、民間企業もこの世代への支援策を拡充しています。政府は2019年から3年間で就職氷河期世代の正規雇用者を「30万人増やすことを目指す」と掲げ ()、各種助成金や求人開拓施策を展開しました(※コロナ禍で当初目標には届かなかったものの支援は継続中 () ())。自治体でも独自に合同企業説明会や就労準備セミナーを開催したり、正社員採用に踏み切った中小企業の事例集を公開したりする動きがあります (NTTとKDDI、氷河期世代ら300人超の雇用創出へ:朝日新聞)。民間企業ではNTTやKDDIが共同で2021年より大規模な氷河期世代向けICT研修プログラムを実施し、修了者を両社グループや協力企業で300名以上雇用する計画を打ち出しました (NTTとKDDI、氷河期世代ら300人超の雇用創出へ:朝日新聞) (就職氷河期世代などへの就労・就業支援に関する取り組み開始~ICT教育を提供、300名超の雇用を創出~ | ニュースリリース | NTT)。実際に「130人超を正社員採用し、他企業での就職も支援して合計300人超を雇用する」と発表されており、民間による大規模採用は極めて珍しい試みとして注目されました (NTTとKDDI、氷河期世代ら300人超の雇用創出へ:朝日新聞)。また地方自治体でも、例えば香川県などが「氷河期世代活躍支援プラットフォーム」を設置し企業とのマッチング支援を行っています (就職氷河期世代活躍支援かがわプラットフォーム: かがわのお仕事 …)。就職氷河期世代限定の求人を出す企業も増えており、ハローワークでは選考方法を面接のみとする未経験歓迎求人をまとめて紹介するページもあります (就職氷河期世代限定・歓迎求人 – 厚生労働省)。「もう求人なんてない」と思い込まず、支援策や特別枠を積極的に活用することで道が開ける可能性があります。国の施策は第一ステージ(2019-2021)から第二ステージ(2024-2025)へと継続中であり () ()、今後も追い風となる制度が出てくるでしょう。

●“学び続け働き続ける”ライフプランへの転換: 就職氷河期世代の多くは高度経済成長期やバブル期に社会人となった親世代を見てきましたが、自らは全く異なるキャリア環境に置かれました。終身雇用や年功序列が崩れ、不本意な転職や非正規生活を強いられた経験から、「仕事人生に計画は立てられない」と感じている人もいるでしょう。しかしだからこそ、これからの10年を「第二の人生」のスタートと捉え直す発想が求められます。定年まで残りわずか…ではなく、むしろ定年後も見据えて70代まで働き続けるくらいの気概で、自身のキャリアを再設計してみてください。政府も高年齢者雇用安定法の改正で70歳までの就業機会確保を企業に努力義務化するなど、人生100年時代を見据えた動きを始めています。幸いエンジニア職種は経験がものを言う場面も多く、年齢を重ねてもアップデートを続ければ価値が高まる可能性があります。例えばシステム保守・運用やプロジェクトマネジメント、人材育成といった領域では、若手にはない知見を発揮できるでしょう。技術の第一線に立ち続けるにせよ、管理や教育側にシフトするにせよ、生涯学び、生涯現役のマインドで挑戦を続けることが大切です。「遅すぎる」ということは決してありません。むしろ今後の日本社会では、就職氷河期世代が直面しているようなキャリアの曲折は誰にでも起こり得るものとなります。あなた自身の巻き返しが、後に続く世代のロールモデルにもなるのです。

最後に強調したいのは、就職氷河期世代エンジニアの問題は当人の努力だけで解決すべきものではなく、社会全体で支えるべき課題だということです ()。企業には年齢にとらわれず人材を評価する視点、行政・支援団体にはきめ細かな伴走支援、そして本人にはもう一度自分を信じて踏み出す勇気が求められます。取り残されたと嘆くだけでなく、小さくてもいいから一歩を踏み出してみること。その先には、同じ境遇から挑戦して成功した仲間たちの姿があります。10年後、「あの時勇気を出して進化する道を選んでよかった」と振り返れるように―。今こそ自身の可能性を諦めず、未来予測を自ら描き、行動に移す時です。あなたのキャリアの物語は、まだ完結していません。

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